ボトルネック(新潮社 米澤穂信)

ボトルネック
確かに期待通りに面白いんだけど、この物足りなさは何でしょうかね。
基本的には文句なく面白かったんですよ。
平行世界の微妙な違いを積み上げていく過程と、それから導かれる結論、そして結末。
当然のように続きが気になって読むのは止まらないし、結末もインパクトあったし読後感も強烈でいい感じだったのに、なにかが物足りない。
うーん、不思議だ。


と、ここまで感想書いてて気づいたんだけど、物足りなのはキャッチコピーに負けてるからかも。
「青春物の集大成」みたいな感じで煽ってたわりには、全然集大成じゃないんですよね。
今までに米澤氏が描いてきた青春物とはベクトルがずれているような気がするんですよ。
これまでは"甘酸っぱい系"だったのに、突然"痛い系"を出されて「これが集大成です!」と言われても。
この作品はこの作品で十分おもしろいのに、なんかこのあたりの売り方で損してる気がするなあ。


とりあえず、あとはネタバレありの感想で内容に触れた部分を。
正直いってネタバレなしだと感想書きにくいです。


今回のはジャンル自体がわからなかったのも、先が読めなくて面白かったですね。
中盤まで平行世界ネタのSF入った話だと思って読んでましたよ。
「11人のサト」を読んでると、ミステリー以外にも不思議系・不条理系の話もいけるように感じてたんで、今回はこっちの方向で行くのかなあ、と。
なもんで、フミカの正体も騙されましたね。
違う世界から来たリョウは写真に写らないとかで、心霊写真好きのオカルトマニアかと思ってましたよ。
突然に始まったミステリーな謎解き部で、普通に嫌なやつだとわかってビックリでした。
あとはやっぱり四章で追い詰められてから終章までの流れかな。
あの流れは、ネタばらしの上手い米澤氏ならではの面白さですね。
最後に作中で強調されていた分岐点が出てきたりだとか、露骨に怪しかったグリーンモンスターが核心だったりだとか、間が悪すぎのメールが届く演出なんかはゾクゾクきましたよ。
でも、その前のツユとの会話の意図がイマイチわからないんだよなあ。
ノゾミがキョウにイチョウの真実を思い出させるための会話にしては、妙に浮いている気がするんですが。
わざわざここでツユの名前を出す意味がなあ。