太陽の汗 (ハヤカワ文庫JA)(ハヤカワ文庫 神林長平)

情報通信機ウィンカの故障原因を究明するために派遣されたJHとグレン。調査を続けるうちに二人の認識にズレが生じていき、やがて現実が分裂する…という内容。
少しハードなものが読みたかったので読了。
初期の作品だからか、比較的わかりやすい話だったかな。


翻訳機やカメラなどの機械を通した情報と、自分が直接感じた情報とが異なるって概念や、その認識の差から世界のズレが生じてくるなんてあたりは、ものすごく神林氏らしいですな。
氏のこういう得体の知れない世界の描写はやっぱりいいですね。
この作品はJHとグレンという二人の一人称視点によって物語が進んでいくんだけど、一人称視点だけに認識のズレがわかりやすく、より鮮明に描かれてる感じがしたなあ。
二人のパートの切り替えもなかなかよく出来ていて、序盤の徐々にずれていく描写では間隔を長く、終盤の一気に畳み掛ける展開では短くというようになっていて、物語への引き込まれ感が非常によかったです。


余談だけど、疲れてるときに読んだせいか、物語とシンクロしすぎて現実感覚が怪しいところまでいってしまいました。
本を読んでいて危ない方向に飛んでいったのって、これが始めてかも。