月の盾 (電撃文庫)(電撃文庫 岩田洋季)

電撃スレで名前が挙がっていて、調べると非シリーズ物だということで購入。
ちなみに岩田氏の他作品は未読。


正直言ってあまり期待してなかったのと見た目の分厚さから、読み出すまでがなかなか長かったんだけど、読み始めてしまうと予想以上に面白くて一気に読んでしまいました。
とにかく思ったが、綺麗にまとまったいい話だなあ、と。
あとがきにも書いてあるとおり「国崎桜花というひとりの天才少女の挫折と栄光の物語」なんだけど、桜花の心境はもちろんとして、桜花をとりまく周囲の人物までしっかりと描写されてるのがいいですなあ。
自分はわりと感情移入して読むタイプなんで、かなり物語に入り込んでしまいましたよ。
おかげで嫌味キャラの美咲に腹が立って仕方なかったです。
余談だけど、美咲みたいなストレートに嫌味な行動をするキャラってライトノベルでは珍しい気がした。
ライトノベルでは、悪役だとしても悪意を直接的にぶつけてくるキャラって少ない気がするんだけど、それは読んでる本が偏ってるだけなのかなあ。
で、こういった心理描写のような綺麗系の要素だけじゃなくて、桜花が認められていく過程でのカタルシスや、展開のスリリングさ、徐々に明かされていく過去の出来事あたりの要素もよく出来ているんで、全体で見るとよくまとまった小説に思えたのです。


一つだけ気になった、というかよくわからんのだけど、実際に名画といわれるものにはそんなパワーあるんですかねえ。
自分は美術観賞なんて縁がない人間で、絵といわれればマンガやライトノベルの挿絵ぐらいしか見ない人間なんだけど、名画というやつを実際に生で見たりしたら作中で描写されてるみたいに圧倒されたりするのかなあ。
わたし、気になります」ってことで、今度どこかに行ったら美術館にでも行ってみようかしら。